巨大金融機関の破綻処理の新枠組み:総損失吸収力とは
仮想通貨を学びたい
先生、仮想通貨の用語で『TLAC』ってありますけど、これって一体何のことですか?なんだか難しい説明でよく分からなくて……。
仮想通貨研究家
なるほど、TLACですね。確かに少し難しいかもしれません。簡単に言うと、TLACは、もしも世界的に重要な金融機関が経営危機に陥った時に、税金を使わずにその危機を乗り越えるための仕組みのことです。
仮想通貨を学びたい
税金を使わない、ですか?具体的にはどうするんですか?
仮想通貨研究家
はい、具体的には、あらかじめ金融機関に、いざという時に価値を減らしたり株式に交換したりできるようなお金(債券など)をたくさん持っておいてもらうんです。そうすれば、危機が起きた時に、そのお金で損失を吸収できる、というわけです。
TLACとは。
『総損失吸収力』とは、金融の安定を目的とする国際的な組織が、世界的に重要な金融機関に対して適用を予定している新しい資金規制です。これは、既存の自己資本規制に加えて、危機時に債権者に対して元本の削減や免除を求めることができる債券や、預金保険の対象外となる預金などを活用し、経営破綻からの回復を図る仕組みです。具体的には、損失が発生した場合に、これらの債権や預金を削減したり株式に転換したりすることで、資本を回復させます。この規制により、金融機関は自己資本を大幅に上回る損失を吸収できるようになり、公的な資金援助に頼らずに、債権カットなどを通じて資本を回復できる枠組みを目指しています。
総損失吸収力規制導入の背景
世界的な金融 వ్యవస్థ において重要な役割を担う巨大金融機関の経営破綻は、世界経済全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。二千八年の世界金融危機では、巨大金融機関の連鎖的な破綻が発生し、各国政府は多額の公的資金を投入せざるを得ませんでした。この経験から、金融安定理事会は、巨大金融機関が破綻した場合でも、公的資金に頼らずに市場の規律を通じて秩序だった処理を可能にするための枠組みとして、総損失吸収力規制を導入しました。この規制は、巨大金融機関が十分な損失吸収能力を持つことを義務付けることで、納税者の負担を軽減し、金融 システム の安定を確保することを目的としています。従来の自己資本規制に加え、総損失吸収力規制を導入することで、金融機関の健全性をより強固なものとし、将来の金融危機に対する備えを強化することが期待されています。総損失吸収力は、平時においては金融機関の経営の安定性を支え、危機時には速やかな資本回復を可能にするための重要な要素となります。この規制の導入は、金融機関の経営戦略や資金調達戦略に大きな影響を与えるだけでなく、金融市場全体の安定にも貢献すると考えられています。
項目 | 説明 |
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背景 | 2008年の世界金融危機における巨大金融機関の連鎖的破綻 |
目的 | 巨大金融機関の破綻時における公的資金投入の回避と金融システムの安定 |
対策 | 総損失吸収力(TLAC)規制の導入 |
総損失吸収力(TLAC) | 巨大金融機関に十分な損失吸収能力を義務付ける |
期待される効果 |
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影響 | 金融機関の経営戦略・資金調達戦略、金融市場全体の安定 |
総損失吸収力の定義と構成要素
総損失吸収力とは、金融機関が経営破綻に陥った際に、その損害を吸収し、事業を継続するために必要となる資本や負債の総額を意味します。具体的には、国際的な金融規制であるバーゼル合意で定められた自己資本に加え、債権者に対して元本の削減や免除を要求できる債券などが該当します。これらの資本や負債は、経営危機時にその一部または全部が削減されたり、株式に転換されたりすることで、金融機関の資本を回復させる役割を果たします。総損失吸収力の構成要素は、各国の監督当局によって詳細が規定されており、金融機関の規模やリスクに応じて異なる水準が求められます。重要な点として、総損失吸収力は自己資本を大幅に上回る損失吸収能力を金融機関に持たせることを目的としています。これにより、金融機関は公的資金に頼ることなく、資本を回復し、破綻処理を円滑に進めることが可能となります。適切な水準を維持することは、金融機関の健全性を保つ上で不可欠であり、監督当局はその状況を厳格に監視しています。
項目 | 説明 |
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総損失吸収力 (TLAC) | 金融機関が経営破綻した際に、損害を吸収し事業を継続するために必要な資本や負債の総額 |
構成要素 |
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役割 |
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目的 | 自己資本を大幅に上回る損失吸収能力を金融機関に持たせること |
効果 |
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監督 | 各国の監督当局が詳細を規定し、状況を厳格に監視 |
総損失吸収力規制の対象となる金融機関
総損失吸収力規制は、世界の金融システムにおいて重要な役割を担うG-SIFIs(国際的なシステム上重要な金融機関)を対象としています。これらの金融機関は、規模の大きさ、業務の複雑さ、国際的な活動範囲の広さから、万が一破綻した場合の影響が非常に大きいため、より厳しい規制の対象となります。対象となる金融機関は、自己資本比率規制に加え、総損失吸収力の最低水準を満たす義務があります。また、総損失吸収力の構成要素となる債券の発行や、資金調達戦略の見直しも必要となります。規制当局は、定期的に健全性審査を実施し、総損失吸収力の水準が適切かどうかを評価しています。対象となる金融機関は、その責任の重さを自覚し、金融システムの安定に貢献することが求められます。
項目 | 内容 |
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規制対象 | G-SIFIs(国際的なシステム上重要な金融機関) |
規制の目的 | G-SIFIsの破綻が金融システムに与える影響を抑制 |
規制の内容 |
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規制当局の役割 | 定期的な健全性審査による総損失吸収力水準の評価 |
対象金融機関への要求 | 金融システムの安定への貢献 |
総損失吸収力規制がもたらす影響
総損失吸収力規制が導入されることで、金融機関は自己資本の充実を迫られ、資金調達戦略の見直しが必要となります。具体的には、総損失吸収力として認められる債券の発行が考えられますが、発行コストや市場の需要を考慮しなければなりません。投資家にとっては、これらの債券は高い収益が期待できる反面、金融機関の経営悪化時には元本を失うリスクも伴います。しかし、金融システム全体としては、巨大金融機関の破綻リスクが減少し、安定性が向上すると期待されています。万が一の事態が発生した際に、公的資金の投入を抑え、国民の負担を軽減できるという利点もあります。一方で、金融機関が貸し出しを抑制したり、金利が上昇する可能性も指摘されており、規制当局は注意深く市場の動向を監視する必要があります。
規制・対策 | 金融機関への影響 | 投資家への影響 | 金融システム全体への影響 | 国民への影響 | その他リスク |
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総損失吸収力規制 |
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今後の展望と課題
総損失吸収力規則は、二〇一九年一月より段階的に導入され、今後も対象範囲や内容が変化する可能性があります。金融の安定を目的とする国際組織は、定期的にこの規則の効果を検証し、必要に応じて修正を加える方針です。今後の課題としては、総損失吸収力債という債券の市場を活性化させることや、各国間の規則の足並みをそろえることなどが挙げられます。さらに、この規則が発展途上国の金融機関にどのような影響を与えるか、詳細な検討が求められます。総損失吸収力規則は、金融システムを安定させる上で重要な役割を果たしますが、その効果を最大限に引き出すには、継続的な見直しと改善が不可欠です。金融機関、監督機関、投資家が協力し、この規則の課題に取り組み、より強固な金融システムを構築していくことが大切です。今後の動向を注視する必要があります。
項目 | 内容 |
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総損失吸収力規則 |
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今後の課題 |
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重要性 |
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