
新ケインズ経済学:硬直性と政策の役割
新ケインズ経済学は、従来のケインズ経済学への批判を基に発展した学派です。貨幣数量説や合理的な期待形成という考え方を支持する経済学者たちは、政府による恣意的な財政政策や金融政策が、かえって経済を不安定にすると指摘しました。これに対し、新ケインズ経済学は、個々の経済主体の行動や市場の構造に着目し、価格や賃金がすぐに変動しない理由を解明しようとしました。例えば、企業が商品の価格を変えるには、新たな価格表の作成や顧客への告知など、無視できない費用がかかります。そのため、需要が変動してもすぐに価格を調整せず、一定に保つ方が合理的な場合があります。また、労働市場では、労働組合の存在や従業員のやる気を維持するために、賃金が下がりにくい傾向があります。新ケインズ経済学では、このような価格や賃金の硬直性が、政府が経済に介入する余地を生むと考えます。しかし、政府が不適切な政策を行うと、その影響が長く残る可能性があるため、政策運営には慎重な姿勢が求められます。経済を安定させるためには、ルールに基づいた政策運営が重要であると、多くの研究者が主張しています。