
黒い水曜日:英国通貨危機の深淵
一九九〇年代初頭、欧州各国は通貨統合を目指し、欧州為替相場機構(通称欧州為替相場メカニズム)を導入しました。これは参加国の通貨を一定範囲内で固定し、為替の安定と経済統合を促すものでした。英国も参加しましたが、国内経済は高物価と景気後退に苦しみ、自国通貨の価値を維持するためには高金利を維持する必要がありました。しかし、高金利は景気回復を遅らせるため、政府は難しい選択を迫られました。投機筋は、英国の状況を見て、自国通貨の維持は不可能と判断し、売りを仕掛けました。欧州為替相場機構は、一度市場の信頼を失うと、大量の資金が特定の通貨に集中し、制度そのものを崩壊させる危険性がありました。英国政府は様々な対策を講じましたが、市場の圧力は大きく、一九九二年九月十六日、ついにその日が訪れました。