
互いの不信が生む悲劇:囚人の苦境
「囚人の苦境」とは、個々の合理的判断が、集団全体にとって不利益な結果を招くという、遊戯理論における思考実験です。二人の人物が逮捕され、互いに隔離された状態で尋問を受けています。警察は司法取引を持ちかけ、一方が自白し他方が黙秘すれば、自白した者は釈放、黙秘した者は重刑となります。両者自白なら中程度の刑、両者黙秘なら軽い刑となります。互いの選択が不明なため、自己利益を優先し自白を選ぶのが合理的ですが、両者が同じように自白すると、より重い刑を受けることになります。つまり、協力して黙秘すればより良い結果が得られたにも関わらず、個々の合理性が全体にとって悪い結果をもたらすのです。この実験は、経済学や政治学などで応用され、協力の難しさ、信頼の重要性を示します。個人の利益追求が必ずしも全体の利益に繋がらない点が核心です。日常生活でも、価格競争や資源の過剰消費など、短期的利益を優先する行動は、長期的には不利益をもたらす可能性があります。この苦境を理解することは、協力と信頼がいかに重要かを認識する上で不可欠です。