
ドル体制の宿痾:トリフィン問題とは
トリフィン問題とは、国際決済の要となる通貨の発行国が抱える構造的な課題です。特に、米国のドルが世界の基軸通貨であることから、この問題はより顕著になります。ドルが国際的な取引で広く使われるためには、米国が貿易において赤字を維持し、ドルを供給し続ける必要があります。しかし、米国が自国の経済を優先し、黒字を目指すと、ドルの供給が減り、国際経済の安定が揺らぎかねません。つまり、基軸通貨国は自国の経済だけでなく、世界経済全体のバランスを考慮した政策運営が求められるのです。かつて英国のポンドも同様の問題に直面し、基軸通貨の地位を失いました。ドルの将来を考える上で、トリフィン問題は避けて通れない重要な視点です。