
通貨の危機:九二年秋の英国通貨暴落
欧州為替相場機構とは、一九九〇年代初頭に欧州各国が経済的な統合を目指し、通貨の安定を図るために導入した制度です。この機構では、各国通貨の為替相場を一定範囲内に維持することを目標としていました。参加各国は、自国通貨の変動幅を制限し、必要に応じて中央銀行が市場介入することで、為替相場の安定化を図りました。この制度への参加は、後の欧州通貨統合、そして単一通貨ユーロ導入への重要な段階と位置づけられていました。しかし、経済状況の不均衡や投機的な動きに対する弱さなど、多くの問題点がありました。そのため、すべての参加国にとって必ずしも良い結果をもたらすとは限らず、経済的な混乱を招く可能性も内在していました。特に、独自の経済政策を重視する国にとっては、この機構の制約は大きな足かせとなることもありました。欧州為替相場機構は、欧州統合の過程における重要な試みでしたが、制度設計や運用には多くの課題が残されました。